松坊堂日乗 はいほー!

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【レビュー】新世代の登山用下着比較【自腹人柱】2016.10.17追記

 本記事もどんどん追記していきますので,検索で来た方は作成日でなく最終更新日を参考にしてください.


 ファイントラックがポリプロピレンの肌着という常識破りの製品を出し,国内外のメーカーも追随中.いくつか使い比べた感想を述べます.

  それまでは登山用の肌着といえば,メリノウールかポリエステルが一般的でした.木綿は(下着にかぎらずどの服でも)登山では使用してはならないとされています.

 しかし夏山の強風・悪天候で疲労凍死の問題が注目されるようになり,他のスポーツで使われるような吸水速乾性素材(クールマックスなど)やアンダーアーマー等は登山には向かないと認識されるようになったらしい.そこで,他のスポーツとは違う登山のリスク(特に疲労凍死)に特化した対策を施した製品が各社から続々と発売されており,ここでは新世代下着と呼ぶことにします.

  •  ファイントラック フラッドラッシュスキンメッシュ 
    • 定番といえる製品.但し,これ単体では機能しない.これのすぐ上に,薄手で吸水発散性の高い下着をもう一枚着る必要がある.メリノウールで極薄手なら他社製品でも機能するだろうが,メーカーは勿論同メーカーで統一することを推奨してる.
    • 実際に着てみた感想.非常に薄いので服が一枚増えたという感じはしない.
    • 上半身裸でこれだけ着ると非常にスースーして,何だか忍者の着るクサリカタビラってこんな感じだろうかと錯覚する.着替えの時,たとえ短時間であれそういう感覚がすることと,着替えが1枚増えるというのが面倒で最近は使っていない.
    • 「皮膚の表面に濡れた衣類が密着しないようにする」という効果は確かに他製品より高い.下山して着替えの時,ザックの当たる腰部分の衣服から汗がジャッと滴り落ちたが,その瞬間まで「濡れて気持ち悪い」という感覚は無かった.
    • 山小屋で水洗いすれば翌朝までに乾くので汗のベトベト成分や匂いが少しは収まるというメリットも他社製品には無い独自の美点.
    • 間違って裏返しに着てしまいやすい.裏返しでも機能するのかは不明.
    • 肌に密着するという目的のため,コンプレッションサイズとなっている.アンダーアーマーほどきつくはないが,アンダーアーマー同様,痒くなっても思うように掻けない.これも常用しなくなった理由.
  •  フォックスファイヤ ゼロドライ

    (フォックスファイヤー)Foxfire ゼロ ドライ ウール ZIP 5115407 046 ネイビー M

    (フォックスファイヤー)Foxfire ゼロ ドライ ウール ZIP 5115407 046 ネイビー M

     
    • ファイントラック製品だと2枚着るところをこの製品だと1枚で済むので最近はこればかり使っている.特に登高時は冬でもすぐ暑くなり,わたしは汗っかきなので,充分体が温まったら上半身はこれ一枚だけにしている.
    • 汗のベトつき感はファイントラックほどではないが従来の製品よりかなり軽減される.
    • 但し,2レイヤーを一体化している弊害か,日陰で風が吹くとかなりの気化熱で夏でも寒い.従って「疲労凍死の防止」という効果もファイントラックには劣る.
    • f:id:ragey:20161017202829j:plainこれはグレーのモデル.裏地の黒いポリエステルメッシュと表地のウールの対比が分かるでしょうか.

  • ミズノ ドライベクター
    • ポリエステル78%・ポリプロピレン14%・指定外繊維(ドライベクター)8%
    • ファイントラック製品と同じく化繊100%だが,この製品は単体でも機能する.
    • 逆にこの上にもう一枚メリノウールを着ると,特に夏は暑い.汗の発散能力も落ちるから,単体で着たほうが良さそう.
    • 汗によるベトつき感は,1世代前の高機能化繊Tシャツ(クールマックス等の星形断面ポリエステル製品)より少しマシ程度か,殆ど変わらないくらい.値段の上でもそう.
    • 最大の欠点は長袖が設定されていないこと.夏山で暑い時,これ一枚だけを着てその上にレインウェアを着ると,腕に直接レインウェアが当たって気持ち悪い.
    • 結論としては登山に主眼をおいた製品ではないかもという感想.結局仕事中に着ている.
  • アークテリクス Phase SL ジップネック
    • ポリエステル87%,ポリプロピレン13%,他のアークテリクス製品と同じく,気温に応じてSL・AR・SVを使い分ける.
    • 裁断と縫製はさすがアークテリクス,体の動きを妨げないという意味での着心地はトップクラス.
    • 但し保温性は△.汗っかきなのでSLを選択したが,単体だと寒い.まあ上にもう一枚着ればいい話だけど.
    • 銀イオンを練り込んで防臭効果もあるとのこと.極限まで試したことはないので実際の効果はまだ体感してない.
    • 結局アプローチ中の服として使用している.特に山からの帰りの電車の中では,なるべく汗の匂いを発散させないため,温存しておいたこのシャツを着る.
    • あ,なので肝心の「汗のベトつき感を軽減する効果」はまだよく分かりません.すみません.
    • 俗物的な感想を言うと,もっとでかくアークテリクスのマークが付いてたほうが良い.

これから買いたいと思っている製品

  • マーモット クライムウール

     

    (マーモット)Marmot WS  CLIMB WOOL BORDE MJK-S4556W  GRN L

    (マーモット)Marmot WS CLIMB WOOL BORDE MJK-S4556W GRN L

     

     

    • 正規輸入元のカタログには載っておらず,他の通販サイトでも在庫が殆ど無い.人気がないということだろうか?
    • 2016.10.17追記.前年モデルのアウトレット品を購入.
    • f:id:ragey:20161017200215j:plain

      f:id:ragey:20161017202520j:plain

    • よく似たコンセプトのFoxfireゼロドライと比べても薄手で,10月も後半に入って買うのはちょっと失敗だったかも.しかし追い追い山行で使って実使用レポートします.

       

  • ザ・ノースフェイス  Flyweight PP Doubleface Grid
    • ポリエステル85%、ポリプロピレン15%
    • 混紡や混織りでなく2層構造になっているとのこと.
  • プロモンテ トリプルドライカラット
    トリプルドライカラットは化繊の吸汗速乾素材の欠点でした気化熱からくる汗冷えを抑え、肌側が常にドライな状況をキープする新素材です。その構造は、従来から展開している3層構造のポリエステル素材(トリプルドライ)の一番肌側の素材に撥水糸を使用することで、汗や濡れによる水分を肌側から放出した後に肌側への戻りを抑え、常にドライに保つことできます。その効果は、汗を大量にかいた時や、水に濡れることが前提の沢登りなどに絶大です。また、低温状態で運動して汗をかいた時も、通常のポリエステル素材と違って汗冷えを大幅に抑えることができるので、冬山のアンダーウェアとしてもおすすめできる素材です。 2012年8月から2013年4月まで、沢登りと山スキーそれぞれ20日間ほど、フィールドで使用しましたが、感覚的にはメリノウールに速乾性が加わったような着心地で、非常に快適でした。